【1】はじめに
古来より日本は、周辺を海に囲まれた海洋国として独自の魚食文化を発展させてきました。そして、水産資源は日本の大切な自給食糧でもあります。しかし、日本も含めた世界各地の漁場では乱獲や水質汚染などにより、水産資源の減少が進行しております。
大地を守る会では、植林や石けん運動などを推進する「海を守る人たち」とのネットワーク作りを進め、国内水産資源の再生に取り組んでいきます。
また、遠洋漁業の水産物については、国際的な資源管理に基づく漁獲物を前提として、水揚げ後の処理状況など安全性においてもトレースできる水産物を取り扱っていきます。
食べ物としての安全性確保はもちろん大切ですが、残していかなければならない「豊かな海」を常に考え、海と環境に優しいライフスタイルの提案や情報発信を行なっていきます。
【2】基本姿勢
1.沿岸、沖合の水産物を優先して取扱います
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の主要海産漁業資源のうち75%がすでに限界まで漁獲されているか、限界を超えて漁獲されているといわれています。このような状況の中、日本は世界の水産物貿易において最大の輸入国(2000年、金額ベース)となっています。国際的な資源管理の観点から、まずは近海の水産資源を適切に管理しながら利用を図ることが必要なことと考えます。国内水産業や地域漁業を応援し、近海の環境改善にも貢献していきます。
2.遠洋漁業については、水産資源の持続性に配慮したものを取り扱います
遠洋漁業の水産物は、国際的な資源管理の枠組みに合致したものの利用を図ります。
また、国際的なルールを無視したIUU漁業(※1)による漁獲物が混入することのないよう、関係団体や取引先にはたらきかけていきます。
- ※IUU漁業とは
IUU漁業とは、国際的なルールを守らない便宜置籍漁船による無秩序な操業のことで、Illegal(違法)、Unregulated(無規制)、Unreported(無報告)の頭文字をとったものです。便宜置籍漁船とは、旗国や船名、操業海域などを頻繁に変えたり、隠したりして、国際社会の規制から逃れて違法操業による漁獲を繰り返す漁船のことをいいます。
3.輸入水産物については、国内漁業を圧迫しないものを取り扱います
戦後、日本の漁業は遠洋や公海へも進出して発展を遂げ、遠洋漁業から供給される多種多様な水産物は私たちの食卓を豊かにしてくれました。
近年、国際漁業における情勢の変化により、外国の200海里内ばかりでなく公海での操業も規制が強化され、日本船による漁獲ができないものがあります。例えば、ベーリング海では公海漁業規制により禁漁になっており、北方の一部カレイ類、銀ダラなどは日本船では調達が困難になってしまいました。
また、かつて北海道沿岸で豊富に獲れたニシンも、近年では漁獲が少なく、お正月のおせち料理に欠かせない数の子も、国産でまかなうことは難しい状況です。
食生活に広く定着している魚で、日本の沿岸・沖合に生息する数が非常に少ないなどで国内漁業を圧迫することがないと判断できる場合は、輸入水産物を取り扱います。
4.環境保全型の養殖を推奨します
水産物の需要は世界的にも高まってきており、将来的には不足することが予想されています。自給率の向上のためにもより安定した養殖に期待が寄せられています。
そのような中で、安全性や環境に配慮した持続性のある養殖を推奨します。
5.水産物の安全性・信頼性の確保に努めます
水産物は、漁獲域、漁獲方法や漁獲時期などを確認した上で取り扱います。
また、一般には退色防止や鮮度保持などの目的で添加物や薬剤が使用されることがあります。漁獲後に薬剤などの処理がされていないことが確認できたものを取り扱います。
【3】取り扱い基準
1.沿岸(注1)・沖合漁業(注2)の水産物
排他的経済水域(200海里内)、及び中国・韓国・ロシアなどの近隣諸国との協議により共同管理された海域において、日本漁船が漁獲した国産の水産物を取り扱う。
2.遠洋漁業(注3)の水産物
日本から遠く離れた漁場で漁獲するカツオ・マグロなどは、日本漁船が漁獲した国産のものを取り扱う。
- ※1 沿岸漁業
沿岸で、一般に小型の漁船で営む漁業を指す。船を用いない漁業、定置網漁業、地引網漁業、浅海養殖業を含む。 - ※2 合漁業
日本の排他的経済水域(200海里内)、又は中国・韓国・ロシアなどの近隣諸国との協議により共同管理された海域において日本漁船が営む漁業で、沿岸漁業以外のものを指す。 - ※3 遠洋漁業
原則として外国の制約を受けない公海、あるいは外国の排他的経済水域内を漁場とし、日本の大型漁船が営む漁業。通常、外国の排他的経済水域内で行なわれる操業には、当該国による許可が必要で、資源管理等の目的で入漁料の支払いや漁獲割当量を制限されるものが多い。代表的なのはマグロやカツオの漁業。
3.輸入水産物
- 食生活に広く定着しており、国内の漁業生産を圧迫しない場合に限り、輸入水産物を取り扱う。
- 環境に調和した、持続可能な生産が行なわれているフェアトレードの水産物を取り扱う。
- 取り扱いを許容する輸入水産物については、別表1に記載する。
| 水産物 | 該当商品(群) |
|---|---|
| 銀ダラ | 切身、漬け込み |
| カレイ | ムキカレイ切身、子持ちカレイ切身、白カレイ切身、漬け込み |
| ブラックタイガー | エコシュリンプ |
| ニシン卵 | 数の子製品、子持ち昆布 |
4.養殖
ここでいう養殖とは、淡水域、汽水域、海水域における水生生物を対象とし、網生簀や柵、土壁、水槽など人工的な施設で閉鎖系の環境で生産が行なわれるものをいう。開放系の環境で行なわれる増殖や、無給餌で生産される海藻、養貝などは基準に含まない。
(1)生産履歴
- 卵または仔稚魚の導入から出荷までの行程において、生産者と水産物の(飼育)履歴が明確なものを取り扱う。
- 輸入された仔稚魚の養殖は行なわない。ただし、定着している外来種の系統維持のための移植は許容する。(※)
- ※近交系による種の劣勢退化防止のために必要な育種技術である。現在対象となる取扱いはないが、系統維持のための外来種の導入は一般にニジマス、ギンザケなどの養殖で行なわれている。
人工的に染色体操作(ⅰ)、ホルモン操作(ⅱ)、遺伝子組み換え(ⅲ)を用いた養殖は禁止する。
(ⅰ)染色体操作
魚の卵子を正常な精子で受精させた後に低温や高温、高圧をかけたりしてショックを与え、第二極体といわれる染色体の放出を妨げて人工的に作り出す性染色体が普通より多い魚。正常な状態は2倍体といわれるが、3倍体は性成熟が奪われるため長命になり大きくなるなどの生産上の利点があるが、性分化不全や妊性低下など遺伝や生態系上での問題が指摘されている。
(ⅱ)ホルモン操作
魚類では基本的には受精の瞬間に雌雄が決まるのですが、形態的に性分化が始まる前の仔稚魚のうちに性ステロイドホルモンを与えると雌化することが知られている。ヒラメなど雌のほうが大きくなる魚では産業的に技術が追求されている。
(ⅲ)遺伝子組み換え
遺伝子組み換え技術により、成長を早める等の研究が進められている。国内での産業化の実態はないが、米国の民間企業による養殖大西洋サケの実用化がすすめられており、一般市場に出すための申請を米国食品医薬品局(FDA)に対し行なっている状況。(2000年世界漁業白書、FAO編)人の健康と生物生態系に脅威を与える可能性が否定できない。
(2)飼料
- 全生産行程において使用する飼料は、全て内容が確認されたものであること。
- 全生産行程の給与飼料は、抗菌性物質を添加していないこと。
(3)飼育環境
- 過度の密飼いは禁止する。
- 周辺環境汚染には充分注意し、適切な給餌・排水・廃棄物等の管理を行なうこと。
(4)動物薬の使用
- ワクチンは当該地域に特定の病気が存在すると認められた場合、及び、関係法規の元で義務付けられた場合に投与する。
- 薬剤の投与を行なわないことを原則とする。ただし、やむを得ず投薬の必要があると判断した場合は、抗菌性物質を使用した病気治療を許容する。その場合、正確な使用報告と記録、休薬期間の遵守と残留検査を必要とする。
- 種苗生産で管理育成されている水生生物の卵、仔稚魚は、法令で承認されている医薬品を予防・治療目的において使用することを許容する。
- 治療目的において使用することを許容する。
5.安全性・信頼性の確保
- 漁獲後に鮮度保持や退色防止の目的で薬剤を使用していないことを原産地証明書等で確認できたものを取り扱う。(※)
- カキ、ホタテ、エコシュリンプ、生食用の魚介類については、食中毒防止の観点から現状ではやむを得ないと判断し、次亜塩素酸(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水)、オゾンを使用した加工を許容する。
- ※ただし、市場で取引される一部の生鮮品の中には、薬剤の使用について日々書面で確認できないものがあるが、流通の実態からやむを得ないものとし、取り扱いを許容する。

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